いつまでも記憶に残っているお姉さんは、下ネタはゲラゲラ笑うのに、裸んぼを恥ずかしがる可愛い人だった
記事:おはなさま(ライティング・ゼミ)
「きゃー、恥ずかしい。裸んぼ!!」
片言の彼女は、白い紙で目の前のグラスをそっと包んだ。
わたしは思った。
あー、これだ。きっとこれが、日本人男性がフィリピン人女性にはまる理由だと。
大学を卒業した後、わたしは約2年間フィリピンで暮らしていた。
日本のNGOスタッフとして、こどもの支援活動に携わるため。
児童養護施設で暮らす子や、障がいを持つ子、路上で働くこどもたち。
現地NGOとパートナーを組み、奨学金支援や、就学前教室の建設支援など、その時々で必要な支援を行っていた。
普段のわたしの仕事は、とにかく歩いて、ひたすらおしゃべりをすること。
せっかく現地にいるのだからと、こどもたちの暮らし、その親の生き方、住んでいる家や、時間の過ごし方。とにかく自分の足で歩いて見て回り、何が必要なのか、話を聞きながら考えた。
貧困地域をいくつも回っていると、段々どの地域にもリーダーがいることがわかってきた。
リーダーは、大抵大きくて丈夫な家に住んでいる。
家の中に入ると、かわいいレースのカーテンや人形、写真立てがたくさん飾っていて、
近所の家と比べると、圧倒的なお金持ちだということがわかる。
そんなリーダーの家に行くと、よく見かけるものがあった。
それは、今は一緒に住んでいない「娘」の写真。
彼女達は、今は日本で暮らし、働き、そのお金を家族に送っているという。
昔で言う「ジャパゆき」さん。日本にある「フィリピンパブ」で働く人たちだ。
昔に比べると随分その数は減ったものの、まだまだ日本にはたくさんのフィリピンパブがある。
日本に暮らす外国人の割合を見ると、中国、韓国に次いでフィリピンは第3位。
一般的には馴染みが薄く感じられるのは、恐らくパブなどの水商売、夜の仕事をしている人が多いからだろう。
最近では、そんな「元パブで働いていたお姉さん」たちがお母さんになり、ハウスキーパーとして人気を集めていたりする。独身の人気お笑い芸人達と、自宅にやってくるフィリピン人ハウスキーパーとの面白エピソードを耳にする機会も増えてきた。彼らの話は、面白くて笑えて、最後にはちょっとだけ心温まるものが多い。言葉はうまく伝わらなくても、いつも明るく笑顔で、細かいところまで掃除してくれる彼女たちのことを、きっと愛らしく、大切に思っているのだろう。
では、どうして日本人男性は、そんなにフィリピン人女性にはまってしまうのだろうか。
それこそ日本語は片言で伝わらないことも多いし、
メイクも日本人と比べると時代遅れに見えるし、
その上、下ネタにはお腹を抱えてゲラゲラ笑っている。
なんというか、よく言えば自然体、悪く言えば、品が無い。
日本人男性は、壇蜜さんのような、しっとりとした上品なお姉さんが好きなんじゃないのか。
そんな風に思っていたわたしも、一度だけフィリピンパブに行ったことがある。
そして、実際にサービスを受けてみて、衝撃を受けた。
それは色々とおしゃべりをしていて、段々グラスに水滴がたまってきた時だった。
グラスに触ろうとしたその瞬間、
「きゃー、恥ずかしい。裸んぼ!!」
そう言いながら、突然フィリピン人のお姉さんが、白い紙ナプキンでグラスを包んだのだ。
「やだやだー。ちゃんと隠してー」と片言で言いながら、
彼女は、お風呂上がりの体にバスタオルを巻くように、器用に紙ナプキンを巻いていった。
そこでわたしは、気付いた。
お客さんの為の気遣いやサービスを、彼女たちは、徹底的にジョークで包んでいく。
座っていると、ただ笑っているだけで、何不自由なく楽しい時間が過ぎていく。
痒いところに手が届くように、次から次へとサービスが展開されていくのに、
気を遣われている感が、まったくない。
そうか、これが、日本人男性がフィリピン人女性の虜になってしまう理由なのか。
彼女達はとにかく優しく、細かいところまで目が届く。
「やってあげますよ!!」という態度を、程良いギリギリのところで見せて気づかせつつも、
そこにギャグを被せるので、あざとさが面白さに変わっていく。
ほろ酔い気分のお客さんが、ちょっと失敗したり、言いすぎてしまったり、
「あ、しまった!」と思いかけたその瞬間には
ジョークを飛ばし、恥ずかしい思いをさせることは、決してない。
はぁー、これがフィリピンパブの魅力かー。
全然知らなかったなー。これはまた来てみたくなっちゃうなー。
わたしがひとり感動をしていると、上司が向こうで叫んでいる。
「誰だー! 延長した奴わー!!」
今までお姉さんのいるところでお酒を飲んだことのないわたしは、
そこで初めて「延長」というシステムを知った。
基本的にそういう場は時間制になっていて、同じ女性をずっと座らせていると、追加料金がかかるらしい。
確かに彼女は「もうちょっと一緒にいても大丈夫—?」とか「ねぇねぇ、その話の続き、もうちょっと聞いてもいい?」と定期的にわたしたちに伺っていた。
しまった。日本人女性のわたしも、まんまと彼女達の魅力にはまってしまっていた。
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